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コラム「またまた・鳴小小一碗茶」report

2017年5月1日

春よ。いつもの春よ。

――「雲南毛峰」が今年も一番に。


 また春が来た。お茶の春である。
 いつもの年どおり、「雲南毛峰」(雲南省)が届いた。
 早ければ2月の中旬過ぎには、上海の市場にも並ぶ。いくら他のお茶の収穫が早まっているとはいえ、春一番で、店頭に大きな麻袋などに入れられて並ぶ。細く揉捻されているお茶なので、カサはあるが、軽い。スペース的には大きなスペースを取るが、冬の間、商品がなく、少し寂しかったスペースを、少し華やいだ感じでうめる。

 雲南省、広西壮族自治区のお茶は、2月には収穫が始まるが、広西壮族自治区のお茶は、遠く大都市の市場までは、なかなか来ない。
 3月に入ると、ぼつぼつ四川省などのお茶が続々と届いてくるので、お茶屋さんの店頭は、今度は場所の奪いあいのように、賑やかになってくる。その頃にはたいてい「雲南毛峰」は売り切れになっている。

 これだけを入手するために中国へ行くわけにもいかないので、売り切れになる前に買ってもらうように、人に頼むことになる。

 雲南省は、普洱茶の産地として有名なあまり、皆が黒茶を飲んでいるように考えるが、常飲されているのは、緑茶だと聞いて、20年以上たつ。今がどうなっているかわからないが、当時の雲南省の緑茶といえば、「南糯白毫」というお茶をよく見聞きした。数度飲んだ記憶があるくらいであった。とくに、印象に残るようなお茶ではなかった。
 名前からわかるとおり、西双版納(シーサンパンナ)の普洱茶、六大茶山の一つ「南糯山」が産地であることがわかる。

 いつ頃であろうか。10年ちょっと前からか。上海の市場に、「雲南毛峰」の名前で並び始めた。「南糯白毫」に似た形状ではあるが、茶葉は少し大きいような気もした。
 安いお茶なので、気軽に買えた。買う前に茶葉の香りを嗅いだら、おいしそうな、大葉種独特の柑橘系をも感じさせる、フレッシュな草の香りがした。
 飲んでみても、おいしかった。
 それ以来、毎年、欠かさず飲むようにしている。

 昨年閉じた私のサロンでも、「安くておいしい緑茶」として、毎年飲んでもらっていた。そして、勧めるお茶の一つとして、普及してくれることを念じて、話しもしてきた。
 中国でもそうだが、このお茶は、あまり人の話題にのぼらない。他に、高くてあまりおいしいとは思えないお茶の方が、ずっと話題にのぼる。
 同じように、日本でも、これだけ、毎年言い続けても、ちっとも普及しなかった。
 あまりにも安いお茶なので、日本でお茶を扱う人たちは商売にならないので、買い付けをしないのかな、と思っていた。

 今年のお茶を、皆さんと飲む機会があって、日本で普及しない理由を聞いた。入ってはきているが、値段が高いので、皆買わない、ということだった。
 お茶の商売は、難しい。値段が高くなる理由は、色々ある。いたしかたない、と思うしかない。誰か、中国に行く人に頼むしかない。

 このお茶には、もう一つ不思議なことがある。
 未だもって、雲南省のどこでとれるのか、産地が特定できないことである。
 入手するようになってから、売り手を違えて、何人にも確認するが、「雲南省」という答えしかいつも返ってこない。毎年そうである。
 産地は、「雲南省」である。

 今年のお茶は、少しスモーキーな感じがした。
 ちょっと昔の中国緑茶のイメージを思い出させた。1、2煎いれるとスモーキーさがとれて、毎年の味になる。
 今年も「春一番」。おいしく楽しむことができた。

函館のイタリアンヴィンティントレランチの前菜の写真 今回の「いっぴん」は、写真のように、皿から溢れ出る、こぼれ落ちそうな、イタリアンの前菜である。
 函館のイタリアン「ヴィンティトレ」(正しくは「ラ・クチーナ・ヴェンティトレ」)の、ランチの前菜をあげる。

 イタリアンの前菜が、小さくたくさんのものが出てくるのを、最初に体験したのは、30年ほど前である。「アルポルト」の片岡さんが、最初に麻布の坂上の小さな一軒家で店を出した時である。「イタリアン小皿料理」として、盛り合わせではなく、小さなポーションで、一つ一つを小さな皿に盛り、日本料理の前菜のように出てきたのが、私にとっては初めてであった。
 一つ一つがおいしかったし、出し方も新鮮であった。

 その後、いろいろのイタリアンで、前菜盛り合わせはポピュラーに登場するようになり、大きめの一つの皿に盛りつけられて出るようになった。

 その極といってもよい存在だと思う。
 これでもか、という種類と分量だ。いつも数えるが、10種以上は載っていると思う。しかも、それぞれが、しっかり楽しめる分量で載っている。
 量だけでの勝負ではない。一つ一つが、しっかり仕事がしてあり、単品としても十分楽しめる。
 最初にこの前菜がサーブされた時、あとで出されるパスタまで行き着くどころか、この前菜すら残してしまった。
 ものを残すのが嫌いな私としては、屈辱を感じさせる量であった。
 それ以来、「ヴェンティトレ」に行く、当日の朝から意識することにしている。残すには、しのびないおいしさだからだ。

 パスタ・ランチなので、後で出されるパスタも選択でき、どれもおいしい。
 この頃は、最後まで完食できる。心構えさえあれば。
 前菜、パスタ、パン、デザート、食後の飲み物がついて、1,600円である。お得感がある。
 夜のディナーメニューも、どれをとってもおいしい。
 函館に行く時は、必ず訪れる店である。
 行かれる方は、是非、この「いっぴん」にチャレンジを。「おいしさ」の満腹感を、十分に味わえる。

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