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コラム「またまた・鳴小小一碗茶」report

2018年4月1日

九壺堂・・さんとの出会いは、こんなきっかけで

――30年前、中国茶仲間がいたことが


 台湾から九壺堂主人の・(セン)勲華さんが、有田の西山正さんのところに、制作を頼んだ茶杯を取りに来るというので、福岡で落ち合って、ご一緒した。依頼の連絡役をしたこともあり、最後の受渡しに間違いないように、立会いたかった。
 ・さんのところを初めて訪ねたのは、「もう30年前くらいだね」と、お互い歳とったことを振り返りながら話をすることが多くなった。
 
 今度も、そんな話をしながら、初めて九壺堂に行った時、長井さんと西川君が一緒だったことを思い出した。
 彼ら二人がいなかったら、私の中国茶への傾倒もなかったかもしれない。彼ら二人は、私が会社勤めとしては一番長く過ごした出版社の、先輩であり、仲間であった。

 年長の長井さんは、マイペースな人が多い出版社の中でも、とくにマイペースな趣味人であった。出版局の編集者として、ユニークなものを出していた。
 玉村豊男さんの名著『パリ 旅の雑学ノート』は、企画をしたのは別の先輩であったが、それを本にした編集担当は、長井さんであった。その後、彼が編集担当の「雑学ノート」は、旅もの、趣味ものを中心に、シリーズ化していった。
 のちに、私の最初の共著『中国茶 雑学ノート』も、彼の編集によった。

 私の著した「中国茶」の書籍の中で、今見ると間違いはたくさんあるが、この本が一番中国茶の楽しさを伝えられた本だと思う。中国茶への新鮮な驚き、感想、思いを伝えることができたと思っている。
 いわゆる目線が、中国茶に初めて触れる人たちと、同じところにあったと思う。
 本来は、いつもそうあらねばならないのだが、何冊も書く中で、次第にどこかに知識、情報を提供する立場になってしまい、一緒に楽しむことから距離が出てしまった、と反省する。

 もう一人一緒だった西川君は、彼と彼の先輩・同僚が始めた『地球の歩き方』シリーズが、社会的に地位を得た頃であった。就職情報を提供するグループ会社にいながら、若かりし日のバックパッカーでの経験を生かして、『Lonely Planet』のようなガイドブックが日本でも欲しい、という思いで、周囲の硬い壁を打ち壊しながら、力づくでスタートさせた。
 今のネットの世界では当たり前になった、一般の人が自分の体験情報を提供し、それを見ながら旅をしていく、という新しい形の旅行ガイドブックに仕上げていった。当時は、「そんな情報、集まるものか、信じられるか」といった心配をよそに、どんどん社会的に支持されていった。

 そんな二人とは、どんなきっかけだったか、会社の中でたった三人の「中国茶友だち」であった。
 人からもらったり、旅先の香港で手に入れた中国茶を、小さなビニールのシーリング袋に入れて、会社の廊下で、こっそりしなくてもよいのに、なぜかこっそり受渡しする仲間であった。
 悪い取引きのような雰囲気もあり、周りから見たら、たしかに「ヘン」であったろう。

 ある時、私の著者の紹介で、台湾の出版社の若き社長が訪ねて来た。お土産に九壺堂のお茶をもらった。しばらく放ってあったが、飲んでみたら、飛び抜けておいしかった。初めて体験する、味、香りだった。
 当然、二人にも分けてあげた。
 そして、その出版社の社長を紹介してくれた著者が、「今度台湾に行く」というので、買ってきてもらうように頼んだ。苦労して探し求めたマンションの一室のお茶屋さんの話を、彼は熱く語った。
「あそこは、お茶屋さんじゃないよ。文化人が集うサロンのようだよ。ふつうのお茶屋の金儲けが好きそうな主人ではなく、文化人だよ。ああいう人を茶人というのかな」、と金儲けが上手な台湾出身の著者は、報告してくれた。
 それを機会に、つてを頼りに、何度か九壺堂のお茶を手にいれた。
 その都度、会社の廊下の取引きで、二人の手にも渡った。

 間もなく、「台湾に行こう」、「九壺堂に行こう」と、当然の成り行きのようになった。
 それが、九壺堂を訪ねたきっかけである。この二人がいなかったら、私の中国茶もなかったかもしれない。
 そして、私の中国茶の師となり、彼は迷惑かもしれないが、中国茶を超えた友となった・さんと出会えたのも、この訪問であった。
 今思えば、幸せな出会いであったし、お茶を超えた彼の生き方、人への向かい方、表現の仕方などが、私にどれだけ影響を与えたことか。
 もう30年の歳月が流れた。

博多のパスタの写真 今回の「いっぴん」、どこにでもありそうなスパゲティ屋さんのスパゲティである。

 出張などの旅先で、大きな都市ほど、どこで昼を食べようか迷う。帰京の時間が迫っている時ほど、困る。違う土地に来たからには、そのでなければない「おいしいもの」を食べたい。でも、なかなか見つからず、どこでもまずいリスクの少ない、「カレーライス」か何かを、駅ビルの中とか、駅ナカの食堂とかで、食べて終わることが多い。

 そんな中で、福岡に出張する時は、この頃別である。
 駅ビルのどこにでもありそうなスパゲティ屋さんを、滞在中に食べようと、しっかり出発前から、行きたいレストランの中に入れるようになった。
 福岡の駅ビルの上の方にあるレストラン街は、水準が高い店、そそられる店が多い。
 今回の「いっぴん」も、そこのスパゲティ屋さんのものである。

 写真のスパゲティは、「有田鶏とゆず胡椒のクリームソース・ほうれん草フェットチーネ」である。食べて、十分すぎる満足をした。ゆず胡椒の入ったソースは、おもしろかった。
 ここがお気にいりなのは、例えば「糸島自然卵」など福岡周辺、あるいは九州の食材を上手にパスタと組み合わせて、出してくれる。パスタの専門のレストランだ。
 単品でも十分量がある。昼はそれだけで、ほぼ満腹になる。セットをとらないでも、十分な内容だ。

 メニューを見ているだけでも楽しくなる。これも、あれも食べたくなる。
 パスタメニューが37種類あるところから、店の名前は「37 PASTA」。JR博多シティ アミュプラザの9Fにある(http://www.stillfoods.com/37PASTA/)。
 時間がない中、今さらラーメンではないでしょう、という方にはオススメである。
 夜などで、パスタを食べて、まだ何か物足りないと思ったら、デザートを食べずに、その数軒横にある、2017年10月1日にこのコラムで紹介している、「Cambell Early(キャンベル・アーリー)」で、そのシーズンのフルーツのパフェを食べると、間違いなく満腹になる。
 併せると、充実のフルコースだ。

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